2015-05-01から1ヶ月間の記事一覧

中国一の裏切り男(十四)

蒋中正の弟子たちが喜んでいる間、改組派の面々は不景気な面を並べていたが、なにせ国民党である。そうそう退屈はできない。 「張学良と共産党が結託している件は、お聞きになりましたでしょうか」 以前に張学良の秘書を務めていた銭公来が、真剣な面持ちで…

中国一の裏切り男(十三)

民国二十四年十一月一日、中国国民党四期六中全会が南京にて開催された。開幕式典の最後に中央委員全体の写真撮影を終え、皆が身を翻してぞろぞろ引き揚げていると、前列の方からパンパンと破裂音が響いた。 「何故爆竹を鳴らすのだ、やかましい」 「商店で…

中国一の裏切り男(十二)

上海の戦火は熄えたが、江蘇省の学生は一向に教室へ戻ってこなかった。江南でのドサクサに紛れて東北では清朝の廃帝溥儀を執政に担ぎ出されて満州国が建国される等、国民が怒る理由には事欠かなかったが、怒ったところでそこらへんに倭寇はいない。従って、…

中国一の裏切り男(十一)

「上海に事件が発生せし時、我々は苦痛を忍びて日本の要求を受け入れたにもかかわらず、倭寇はなおも乱暴に脅迫せり。再三我が上海防衛軍を攻撃、民家を爆撃し、市街を破壊せり。同胞は悲惨にも蹂躙され、邦家は滅びんとす」 淞滬事変勃発を受けて、蒋中正将…

東京への対抗意識を失った大阪

今日五月十七日に投開票を迎えた所謂大阪都構想は、極々僅差ながらも反対多数で否決された。 今回の住民投票は大阪市民のみを対象としていたが、全国の注目を集め、大阪市西区堀江出身の私はもちろん強い関心を寄せていた。 巷間ではNHKの世論調査によれ…

中国一の裏切り男(十)

政治家となった周仏海先生は、元第一師団長の顧祝同省主席に招かれ、江蘇省政府委員兼教育庁長の官職を得た。江蘇は南京市や上海市と境を接する長江下流域の先進地帯であるから、座り心地の悪くない席である。 周仏海先生が教育庁長として最初に取り組んだ仕…

中国一の裏切り男(九)

「日本帝国主義の圧迫、共産党による工作と、我々の党は存亡の危機に瀕しておる。このままでは、革命の失敗は免れぬ。諸君らは一体何をやっているのか、そのまま指をくわえて革命の失敗を見ているつもりかね」 汪兆銘ら国民党改組派や共産党による工作に対し…

中国一の裏切り男(八)

蒋中正は数の上で優位な軍閥をモグラ叩き式に打ち破ったが、これは勿論偶然でも天の助けによるものでもない。国共合作時期にソ連を訪ねた際、彼が注目したのはソビエト共産党の組織管理手法だった。つまり、特務工作政治である。 北伐前の広州で共産党ともめ…

中国一の裏切り男(七)

北伐を完成させてから三ヶ月後の双十節、蒋中正は国民政府主席に就任した。国民革命軍総司令が采配する革命戦争の時代は終わりを遂げた。 孫中山は民主共和国建設に当たり、その辿るべき段階を三つに分けた。革命軍が国家を指導する軍政、国民党が中国人民を…

中国一の裏切り男(六)

年が明けて民国十七年一月、蒋中正は南京にて国民革命軍総司令への復職を宣言した。自ら望んでの復職ではなく、わざわざ外遊先の日本から呼び戻されての復職であるから、万事蒋中正の好きなように事を運べなければ嘘である。 これまで散々蒋中正と揉めてきた…

「日雑」とは

中国のネットを見ていると、猛烈な日本フアンをよく見る。所謂「哈日族」という語彙を目にしたことのある方もおられるとは思うが、その「フアン」の程度は日本のコンテンツを消費するのに止まらず、甚だしきは「日本人になりたい」或いは「日本人に生まれる…

中国一の裏切り男(五)

武漢の汪兆銘が反共姿勢をとったことで、南京の蒋中正との対立理由は消滅した。これで国民党は一致団結、一気に北伐して中国を統一したのかと言えば、話はそう滑らかに進まない。 南京も揉めた。 蒋中正総司令率いる国民革命軍主力は、南北中国が交わる中心…

中国一の裏切り男(四)

共産党が主導権を握る武漢国民政府を脱出した周仏海先生だが、やっとの思いで上海までたどり着くと、どういうわけか、蒋中正将軍の指導する南京国民政府の警官隊に逮捕された。 そんなわけで牢獄にぶち込まれたが、先生は中国共産党の元祖闘士とはいえ、これ…

中国一の裏切り男(三)

北伐戦争は順調に推移したが、こうなると面白くないのは共産党と国民党左派である。兵力で以て強引に主導権を獲得した蒋中正将軍は、北伐軍の輝ける総司令として民衆のヒーローになろうとしている。 コミンテルンのボロージンは、国民党各党部の左派に声をか…