近況

 近頃ミクシーもめっきり寂れ、長文で以て日々の愚痴やら思いつきを垂れ流す場を失ったので、ブログを始めることとした。思えばテキストサイトが流行したのは今や十年以上の前となり、爾後ブログからミクシー、TwitterFacebookと、主要なツールは移り変わっているが、その都度公開される文章が短くなっている様に思える。本邦において「スピード時代」という表現が使用され始めた正確な時期は浅学ゆえ知らないが、小生の見た記憶の中で最も古くは昭和八年の文献に登場しており、またインスタント食品が次々と出てきた昭和三十年代においても頻用されていたが、この語は今の世において死語としての地位を与えられている。既に万事スピードと簡便性を要求することは当然として受け入れられているが故にとりたてて論ずるに値せず、ネットにおける主要ツールの変遷もまた、考察の余地が存在しない、後期近代的な「自明」の原理に支えられているのであろうか。
  久々に長文を書いたもので、うれしさのあまり面倒くさい駄文を長々と連ねてしまったが、ここで漸く本題らしきものに入ると、三年務めた居酒屋の古参がどんどん辞めていき、自閉症が疑われる程度に飲食業に向いていない小生が最古参組になっていく状態にいたたまれなくなったため、一月末から家電関係の業界新聞社でアルバイトをしている。
 しかし、我が家にある家電は炊飯器、電子レンジ、ワンボックス冷蔵庫くらいなものであり三種の神器すら揃っていない上に、これらはすべて貰い物である。テレビは一応高校の同級生益弘君より貰い受けたブラウン管テレビがあったが、同じく益弘君より頂戴したPS2とともに、雄弁会員の福利厚生を充実させるべく第二会室糸氏下宿に寄付してしまった。ちなみに今このブログを書いているパソコンは雄弁会同期にして学部の二年後輩−大きなお世話だがそろそろ進級した方が良い−宮田君から購入した品である。さらに言えばその前に使用していたパソコンは勿論貰い物であり、入学当初はそもそもパソコンを持っていなかった。
 業務上家電専門家のような顔をして取材等に行く必要があるのだが、上述のような体たらく故に家電に関する基礎知識どころか常識すら備わっていない、さらに言えば電器屋に殆ど行ったことのない状態で始めたため、これまでにかいた冷や汗は計り知れない。最初の頃は、液晶テレビの新製品を見て「こんなに薄いものなのか」と感心するのを我慢しながら「横からでもちゃんと見れますね」とコメントし、赤っ恥をかいた。考えてみれば今自分の使っているパソコンの液晶画面も横から見ても色の変化がないのだから見れないわけがない。
 このように右も左もわからないところから始めた今のアルバイトだが、やってみると勉強になるところが多くて中々面白い。家電の詳細スペックは正直言って古代ヒッタイトにおける少数民族征伐戦争の歴史くらいどうでもいいが、かつて日本経済の成長エンジンとして活躍した電機産業、日本製こそ世界最高と、国民の誇りでもあった電機産業、今まさに変革を迫られている電機産業の動向を見ていると、日本社会の今後がぼんやりながら見えてくる。
 ・・・・・・ここまで書いて自分の今後を考える必要性に気づいたので筆を擱く。