「日本のいちばん長い日」中国人の感想

 ポツダム宣言を前にした日本人の葛藤を描いたこの映画だが、果たして「外国人が観て面白いのか?」、「そもそも見られているのか?」という疑問がある。そんなわけで、中国のポータルサイト「豆瓣」の映画レビューをあたってみた。
まず、岡本喜八版の「日本のいちばん長い日」には、なんと134件のレビューがつき、10点満点中8.2点(つまり平均星数4.1)の高評価がされていた。以下、いくつかを翻訳の上、転載する。

✩×4「オールスター陣容。反戦が基本テーマで、ある人物と精神への美化もある。岡本の映画は個性がハッキリと出ている。時代劇風の中にも突然笑いどころが出てくる。軍国主義はまったく恐ろしい。鬼子の反乱はみないかにも鬼子だ」

✩×4「歴史伝記映画であるが、リズムのよさは劇映画に劣らない。名優極めて多く、「覆国大業」と称してよい(注:中共建国六十周年記念に制作された、台湾を除く中華系オールスター映画「建国大業」とかけたもの)」

✩×4「軍国主義最後の狂気」

✩×1「岡本の爆発的映像言語は疑いなく一流であるが、映画内容は実に反動の極みである(正に極度に反動的な内容が、このような映像を支えているのだが)。失敗を認める過程(日本は被害者のイメージ)、失敗を認めてのみ復興ができる(陸軍大臣切腹したあとのシーンは灼熱の太陽)とのメッセージが描かれる。靖国神社に捧げる映画」

 剣戟もので有名な岡本監督がメガホンをとる、世界の三船を始めとした昭和日本のオールスター映画という文脈で観ている人が多いようである。日中関係のこじれている今では信じられないことだが、中国中央電視台でも流していたとか。全体的に、演出や撮影技術、構成に対する意識の高いコメントが多い。逆に言えば、意識の高い映画マニアしか観ない映画なのかも知れない。
 三船敏郎ファンが多いようで、阿南陸相に関するコメントが目立つ。「戦犯阿南の切腹シーンでは心が痛んだ」「切腹シーンは白眉だった」と、切腹に注目する声が多かった。阿南陸相の武士道精神を賞賛するコメントも多く見られ、「軍服を着た武士映画」という品評が、中国人からの目線を表しているようである。
 なお、みんな大好き佐々木大尉や畑中少佐については、「鬼子」、「軍国主義の狂気」、「笑いどころ」で片付けられてしまっている。そう言われてしまうと概ねそのとおりなので、残念だが致し方ない。

 なお、このようなコメントもあった。
✩×4「やや美化と逃げた部分があるが、あの頃(67年)の日本はやはり基本的に反戦的であり、今の日本はこのような映画を撮ることはないだろう。戦争の痛みは次第に忘れらていき、「男たちの大和」のような軍国主義映画ばかりとなり、軍国主義の狂気は、美化されて日本精神の一つとなる」

 そこで現在上映されている新「日本のいちばん長い日」だが、中国では上映されていないものの、3件レビューがあった。少ないので全部紹介する。

✩×1「如何に剣を片手に悲劇の英雄を作り出すかを論じたもの。ドイツはまだヒットラームッソリーニをこのように撮る度胸はない」

✩×5 「とても面白かった、リズムをしっかりと捉えている。ベテラン俳優陣の演技は言うまでもなくよかった」

✩×4「京都で見た、とてもいい感じ。日本語のレベルがあまりよくないので、よくわからなかったけど」

 旧版を見たことのありそうなコメントがなくて悲しい。

新版レビューhttp://movie.douban.com/subject/26259636/comments
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